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中島みゆきツアー 帰りにピンチ [日記]

「中島みゆきツアー2010」の帰り、急に気分が悪くなり、私は気を失いかけてしまった。
それはコンサートが終わり、帰り道の電車に乗っていた時のことだった。

私は、しばらくのあいだ立ったまま本を読みながら車内で揺られていた。
本を読んでいたら急に乗り物酔いに似たような気持ち悪さを感じた。
本を開いて読む余裕はただちになくなった。

ただ立っていることに必死にならざるをえなくなった時、ちょうど停車駅にさしかかり、
付近の座席が空いたので、そこに座ることにした。

なんだか身体に力が入らない。

首でさえまっすぐに座らない、首を前に投げ出してしまうと呼吸が苦しくなった。
人目を気にしてはおれず、アゴを突き上げる形で、口を上にしてなんとか首の安定を図った。

ますます力が入らなくなり、持っていた荷物を放して足の間に落とさざるをえなくなる。
コンサートで買ったCD1枚とペラの冊子のみのごく軽い袋でさえも、指で支えられない。
自分の手元を見ることもできなかった。

車内の天井のあたりに視線が向けられていたが、そのとき私の視界は不鮮明だった。
自分の視野はブラウン管テレビの砂嵐画面のようなノイズまじりになっていた。
物の輪郭も色もなんとなく判別できる程度で、そして視野が全体的にうす暗い。


私はイヤフォンを付けて音楽を聴いていた。
そのときリモコンの音量をいじるような余裕はない。

どういうわけか耳から聴こえてくる音楽の音量が小さくなっていくのがわかった。
まるでスポンジの壁を通して遠くから鳴っている音を聞いているようで、聴覚もおかしくなっていた。

自分の身体のコントロールがどんどん遮断されてしまって、
深い泥にぬかるむように身体の中に閉じ込められていく気分だった。

恐ろしかった。


朦朧とする意識の中、自分の下車駅のアナウンスを聞きとり、
車外に出ることだけに集中して、ホームに降り立った。
ろくに歩くこともできず、ホームの待合イスに座る力もなく、イスの手前でゆっくりひざまずく。

車内とは違い、冬の夜のホームは寒かった。

しかし、その寒い空気がそのときは心地よく、フワーッと意識が戻っていく感じがした。
ふと、額にあてがっていた手の甲が濡れていた。
あらためて額を触って確かめると、汗をかいていた。それもしずくが滴るくらいの量を。

どうやら一気に全身発汗したらしく、今度は単純に寒くなった。
身体が汗で冷えて寒かった以外は特に気分の悪いところはなくなり、無事に帰ることはできた。


後日、この失神しかけのときに聞いていた音楽のことについて振り返る。

聴覚のおかしくなった時、マイケル・ジャクソンの「スムーズ・クリミナル」という曲が流れていたことを覚えている。この曲のサビではこんな歌詞を繰り返している。

”Annie are you ok? So,Annie are you ok? Are you ok Aniie?
(アニー、大丈夫なのかい?大丈夫、アニー?本当に大丈夫なのかい?)”

そのときはこんなことを考えるような余裕はまったくなかった。
後日、仕事中にこのことに気付いた時、可笑しくて人知れず笑いをこらえていた。

そうか、私の身を案じていてくれたんだね、マイケル!ありがとうマイケル、もう大丈夫さ!
と、思っている。


急に自分の身体がまったく思うようにならなくなり、苦しくなる。
まさか自分がそうなるだなんて、やっぱり普段全然考えてもいない。

中島みゆきさんはこの日のコンサートの後半で、こんなことをおしゃっていた。

”私たちは「ナマモノ」ですから、明日どうなるかなんて誰にもわかりません。

1歳の人も100歳の人もみんな、どうなるかはわかりません。

だから、今日、いまここでみなさんにお逢いできたこと、嬉しゅうございます。”


というようなコメントをみゆきさんはラストの曲の演奏前に語られていた事を思い出します。
そのときは格別印象に残った言葉ではありませんでした。

しかし今回、自分がどうなるかなんてことは本当にわからないものだ、という実感が遡及することで、
みゆきさんの込めた言葉の意味に少し触れることができたような気がします。

ほんの2時間ほどの間ですが、同じ空間に居れて嬉しゅうございました。


何気なく見ている当たり前を特別なものとしても捉えられる感性、
本当の人格の豊かさはここらに根を下ろすものではなかろうか、と今は思います。

おめもじでした。
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